青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

煩悩はどこからともなく湧いてくる。(20040422underconstruction)

チェスがなにを望んでいたのか、わたしには結局解らなかった。
ユーシーは、なにを望んでいたの?
チェスは、わたしの側にいるのは、わたしとのコネクションが失われるとチェスの機能が停止するからだって言っていた。わたしは、本当は逆じゃないのって思ってたんだ。チェスとのコネクションを離れると、わたしが失われてしまうって。すぐにじゃないかもしれないけれど、自分が保てなくなるって思い込んでいた。
いま、わたしは自分を失い始めている気がする。


ユーシーはわたしに気を遣ってくれないの?
ユーシーは無言のまま、空を見ている。


「わたしを抱きたい?」
「それだけじゃない」
「でも、それなら抱いてみればいい」
「自分を失うのが恐いんだ。欲望に意識が飲み込まれてしまうのが」
「なに言ってんの? 飲み込まれたことがあるわけ?」
「気がついたら血の海の真ん中に、
おれがいた」
「そこにいたんだ」
「ああ」


二の腕を指先が辿っていく。唇に挟まれた指先はその舌に弄ばれる。
背筋が弓形になるのはその後だった。


「ユーシー、どうすればいいの?」
ネットに取り込まれた彼は目の前にはいない。自分の微かな意識で彼の存在を探そうと彷徨う。
「終わったんだ」
実際、わたし達の、警備の任務には落ち度が出ていた。リーダーはチェス、わたし、ミハナはサブだったけど、二人とも現実を見失っていて、建物を出ると保護観察期間に入った。
「おれの言うことは聞こえるのか?」
聞こえる。この世界には存在しない男の声が確かに、今も聞こえている。
どこにいるの? どこから話しているの? 声にならない問いかけが、胸の内を不安にし、頭の中を駆けめぐる。