青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

 すれ違っていたって気づくこと

たぶん彼女は彼が好きだった。
それでも、彼は彼女が恐かった。彼女は彼の後ろの席で、彼の背中を、髪に覆われた後頭部を見つめている。
つついてやりたい。殴ってみたいって。彼女は思ってる。
彼は、そんな視線を感じておびえている。


時々肩を指先でつついて話しかけてくる。
同じグループになるのは憂鬱だったけど、彼女の意識が向いている感じがしないときは特に気にならなかった。彼自身は元々気にはにしてはいなかったからか。


学校の祭りで炊き出しがあった。カレーには隠し味で塩が入っていた。彼女のお母さんが作ったカレーだった。
「わりーか」
「でもうまいよ」
もぐもぐ、もぐもぐ。カレーライスを食べている間は無口になる。


「お前、山崎のこと好きなんだろ」
彼女がわざわざそう言いに来たのは中学三年の時だった。
「違うよ」
まだそういう感覚が分かっていなかったんだと思う。純粋に、頬を赤くして右手を振り上げる山崎の仕草が面白くてをからかっていた。そうだと思う。彼女はかつての自分の姿を彼に見つけたのかも知れない。


あのころはどうして彼女がそんなことを言ったのか解らなかった。


違うと思ったが、どうだろう。
あのとき彼女は男の子のようで、彼は女の子のようだったのではないだろうか。


彼は大学生になった頃、街中で彼女を見かけたが、物語は始まらなかった。