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『負け犬の遠吠え』を読み終える。我が身の負け犬度を突きつけられるような壮絶な内容だった。それでも笑いがあるのは、彼女、酒井さんの筆力だろう。人生において、笑ってすませられないような現実が、微笑みと自嘲混じりに連ねられている。気持ちというものは、湧き上がって消えていく。思ったとしても書き留めたりしなければ、残るものではない。嫌なこととか、不安なことはその場から逃れたくなったりする。日常の中で揺れ動いている感情、「負け犬」であるという負い目? そこまで言ってしまえば、手負いにもならない、どうしていつまでも一人なのだろうと心配の眼差しは向けられても、救済の手は差し出されない。誰も見向きもしないかもしれない。それでも、彼女の彼の日常は朝日と共に訪れ、日没では沈まないかもしれないが、日付の代わりと共に移りゆく。そのような現実が文字列という形になっていること自体が、奇跡なのではないだろうか。そんな現実が表現されたことで、少し救われた気がします。
- 作者: 島崎今日子
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2006/11
- メディア: 文庫
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