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トルコ:デモ続く…若者、つかの間の「自由」を謳歌
毎日新聞 2013年06月06日 10時24分(最終更新 06月06日 10時49分)

イスタンブール大治朋子】トルコ各地に拡大した大規模デモは6日未明も続き、イスタンブール中心部のタクシム広場には1000人近くの市民が集まった。警察車両の進入を阻むため、10カ所ほどある出入り口には巨大なバリケードが築かれている。その中で若者たちはエルドアン首相の退陣を求める一方、深夜まで歌い、踊り、つかの間の「自由」を謳歌(おうか)していた。

 公園の中心部にある銅像の脇に小屋のようなスペースを作り、車座になり語り合う若者たちがいた。中には毛布や水、食料が山積みになっている。「9日前から野宿を続けている」という学生たちだった。その中の大学4年生、アリ・ジョソズさん(23)は、デモが拡大する発端となった「事件」に遭遇した一人だった。

 一連の騒動は5月31日、再開発事業のため広場に隣接する公園の木を伐採しようとした行政当局者や警官隊が、環境保護を訴えて木の周辺で泊まり込みをする30人余りの若者らを強制排除しようとしたことから始まった。

 「あの日、僕たちは木の近くにテントを張り、眠っていた。午前5時ごろ、ブルドーザーと共に警官隊が突然現れ、力ずくで排除しようとしたので抵抗すると、催涙ガスや放水を浴びた」。仲間の一部がその様子をフェイスブックツイッターで伝えると、広場に続々と若者が集まり、警官隊との大規模な衝突に発展したという。「当時はこれほどのデモになるとは思ってもみなかった」。ジョソズさんの足元を見ると、海水浴用のゴーグルが転がっていた。「催涙ガスや放水対策に便利なんだ」。仲間の青年が笑顔で言った。

 広場の一角には、食料や医療を無料提供するボランティアのテントがある。ひっくり返されて燃やされ、ガラスを割られた地元メディアの車の前で記念撮影をする男女の姿もあった。外国人観光客の「人気スポット」にもなりつつあるという。

 広場の入り口にある銀行の窓はペンキで落書きされ、営業中止になっていた。その前で、会社員のバハドルさん(27)に話を聞いた。「エルドアン首相は市民に対し、常に『聞き手』でいるよう求める。酒の販売を規制し、人前でキスをするなと言う。市民の生活を変えようとするけれど、こちらの声は聞かない。抵抗すると力ずくで抑え込む。ここに若者が連日集まるのは、警官隊が入れない、誰も命令しない、そんな自由と解放感を感じられるからだと思う」

 ギュル大統領は4日、一連のデモについて「中東で起きた『アラブの春』より、米国で起きた社会的格差の是正などを求めるデモ『ウォール街を占拠せよ』に似ている」と述べた。中東の「正当な選挙すらない国」で起きたデモと違い、所得格差など経済問題を巡るデモだという趣旨だ。

 だが大学4年のディランさん(21)の意見は違った。「エルドアン首相は中東の独裁者とは違うかもしれないが、最近は保守化、強硬姿勢が目立つ。一方で、トルコは米国のような格差社会ではあるけれど、ここには米国のような表現の自由はない。僕たちの春は、まだ来ていない」