青空が落ちてくる。

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はんぺんのバター焼き


(双調平家物語8平治の巻I「後白河帝」より抜粋)
「お主上の徳にまさってあるものは、法の正しさである」と信ずる信西は、お主上に敬して仕え、逆らわず、そして、お主上の立場を、自身の学の力を顕現させるための方便であると、明確に理解していた。
御世に最大の「不忠」を働いていたのは、御世の帝の忠実なる代行者、信西だった。そして信西は、自身のありようを「不忠」とは思わなかった。「不忠」とは、役立たずの天子の徳を第一に置く、需家の学問を導き出す概念にすぎないからである。
信西は、人の徳も、性の善も悪も、人の内に潜む欲望も、深く顧みなかった。重んじられるべきは、ただ「法の正しさ」−人のすべては、その内に収まるものと把握していた。それこそが、信西の目指した「理想の達成」なのである。
信西は、御位にあられる主上の「お立場」ばかりを思い、そのお心の内を思わなかった。「法の徹底」にばかり奔走する信西をお用いになるお主上は、しかし、「法」のことなどはどれほどもお考えにならなかった。お主上の思召されたのは、「法」ではなく、ただ「人」だったのである。
施政の代行者は法を求め、お主上は人をお求めになる。法は、求められた「人」を逐わんとして、かえってその人に背かれた。平治の乱とは、すなわちこれである。
その御世に「権勢の人」としてあったのは、信西ではなかった。人を求め給えるお主上に寵された、藤原信頼だった。信西が信頼を逐う前、信頼が信西を襲った。「法の正しさ」を言い立てる施政者がいて、人はまだ、「法」よりも「人」を求めることを真とした。かくして信西は潰え去り、「西」へ向かうことを余儀なくされるのである。