鰤
(双調平家物語9平治の巻I「源平両武」より抜粋)
武が力を持つ時代に至りついて、清盛は武を信じなかった。武に突き進む者は走狗でしかない−それが都の定めであることを、清盛はよく知っていた。都の貴族達は、武を用いても、武に報わない。武を軽んじればこそ、武を用いようとも思わない。武の働きを一時だけ賞して、武なる男を、決して受け入れない−清盛はそのことをよく知っていた。であればこそ清盛は、夜討に向かって夜討を避けた。武に関わって、「武」として蔑まれることを拒んだ。都人士は、決して「武」を好まない。都に生まれ育った清盛は、そのことを知る都人士の一人だった。
- 作者: 橋本治
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2009/12/22
- メディア: 文庫
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