青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

エゴだけど、彼女のことを(underconstruction20040428)

彼は彼女から本を奪った。なぜだかは憶えていない。彼女が本を好きだったのかは憶えている。そして後悔している。なぜそのようなことをしてしまったのだろうか。見返す彼女のまなざしを憶えている。その記憶が彼に罪の意識を時々思い出させる。(それは嘘だろう。単なるエゴだ。自分の本を他人が手にすることが許せなかった。だったら、どうして本棚に並べたの? 大事にしまっておけばいいのに。)
「どんな本だったの?」
「少年が黄色いドラゴンと旅だったかな、冒険する話、タイトルは忘れた」
「少年はエミール」
「そんな感じだったかもな」
「だったら、ドラゴンは黄色と青の縞だったんじゃないかな」
彼女の視線は、どこか遠い。

「好きとかって言うんじゃないけど、気になる存在ではあった」
「意味ないね」
「うん」