テーマは『夏休み』
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/09/25
- メディア: 雑誌
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手持ちぶさたで屋根の上でごろごろしていたんだ。
「暑い…」(独り言)
洗濯物を片付ける母は、そのあとに布団を片付けるつもりだったらしい。
「(滑って)落ちるよ」
「大丈夫、(滑れば)解るから」
言い訳なんていくらでもできたけど、途方に暮れていたんだ。
高2の夏休みって、太陽の下で、なにか楽しいことがあるんじゃないかって。そう思っていたけど、ここには太陽の他にはなにもない。太陽を感じながら、わたしは孤立していた。誰か側にいれば、楽しい時間があったのかもしれない。選ぶのは自分か、選ばれるのか。わたしは誰も選ばなかった。一人でいることを選んだのかもしれない。それはなにもしないということだった。なにもしないということが、なにもしないという選択になることを、その時のわたしは知らなかったんだ。一人でいることは苦痛ではないけれど、退屈でもあるということを知らなかった。自分を忘れられるほど夢中になれるものも見つけられないまま、時間という財産を無駄に過ごしてしまったのだろうか。わたしはなにも考えていなかったのか。頭の後ろで両手を組んで太陽の輝く青い空を見ていた。これから自分がどうなるのか想像しながら、空がそのまま落ちてくる錯覚に陥ったとたん、上半身が起きていた。
考えることは大切です。
そこに自分がいるかどうか、よく考えてみてください。