青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

 チェス

チェスは毛糸の固まりのような、たぶん有機ロボットと言ってもいいようなものなんだろう。ジェニーもその程度しか自分の相棒のことを知らない。知っていようと知るまいと、チェスが彼女が息を吹き返したときから、彼女はチェスがいなければ存在できない。ジェニーを失ったチェスは、新しい主を捜すのだろう。成長したヤドカリが新しい貝殻を探すようなものだ。
チェスには、有機型の交換ボディーに直接アクセスする装置があって、ダイレクトに神経系統にアクセスして探索することができる。
ジェニーの手のひらに、チェスのふさふさの中から触覚が伸びた。
「とりあえず、いつものように行ってみようか、ってことだよね」
ジェニーの視界には、指先の五つの赤いマニキュアの光沢が煌めいていた。


ユーシーがいつからこんな状態になったのかは解らない。交換ボディーとして売られていた彼を手に入れたのがジェニーだった。彼女にしてみればとんだハズレくじだったが、それを楽しむという才能が彼女にはあった。ジェニーとユーシーの出会いはそこから始まった。