青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

青空が落ちてくる

彼は絵画のような写真を撮りたがる。 彼女は、映画の一シーンのような写真を撮りたがる。

その景色を切り取ってみたいと思ったんだ。

 感性の天秤

新しい物語は少年の初恋から始まる。 今考えているわたしは、昨日までのわたしを殺さなくてはいけない。でも、それでも思い出、それが大切なものなのか今のわたしには分からない。逃れられない忌まわしい記憶ではないかと思うこともある。思い出について考え…

 初恋にまつわるできごとなどなど。

彼女のそんな言葉を聞いたとき、日頃なんとも感じていなかった彼女がリアルになった気がした。彼女から離れるのには、それなりの忍耐と体力が必要だろう。それを受け入れられるだろうか。その疑問が不安から来るのか、意志から来るのかは解らなかったけど、…

 初恋にまつわるできごとなどなど。

「初恋ってどうだった? わたしじゃないよね」 そう言って、彼女は無責任に無邪気だった。 「わたしはね、どきっとしたことはあったけど、首に縄付けておきたいってそこまで思ったことはまだないなあ。君のことは好きだけど、そこまでかどうかまだ解らないな…

記憶を消すことはできない。蓋をしていたのさえ忘れていて、気を緩めていると湧き上がってくる。それをいつか、永遠に失われることのない悪夢と呼んでいた。

ここにいない人のことをどう思えばよいのだろう。いくら想いがあっても、それを伝える術を持たないのだ。 電話は必ずしも通じない。手紙は届いたかどうかも解らない。なしのつぶてに途方に暮れるのはこちら。ボールはここにあって、相手はいない。あの目に向…

葛生がどこにいるかなんて知らないよ。なにも言わずに出てってそれっきりなんだ。 別にどうってことないけど、なんか静かになったかな。

君は、ここにはいない。

ぼくはここにいる。

フッと、長らく連絡を取っていなかった友達のことを思い出して、調べて手紙を出した。返事が来る。懐かしい気持ちはあるのだけれど、思い出は遠くなったと思わざる得ないような気がした。もうこれ以上彼に近づくことはできないだろう。 わたしは今ここにいる…

 3.カジノ

厚い絨毯をヒールが食い込む感触が心地いい。初めて踏み込んだときにはかかとが確かにならなくて足首を捻りかけ、スロットもロクに楽しめなかった。今はスロットの前で立ち止まることはない。のめり込めないんだ。にぎやかな場所にいるはずなのに、いつの間…

待っていたの? それとも、勝手に終わっていたの? どちらでも許さないけど。

チェスを否定しないで。 チェスがいなかったら、わたしはここにいなかったって、ユーシー、知ってるんじゃないの? どうして目を逸らすの? 答えて。そうじゃないと、今度はわたしがあなたを否定する。 ユーシーを否定することでわたしはなにも得られない。…

 ② また目覚めてしまったの。死んだはずなのに。

トップがミニのTシャツにジーンズを選んだ。ドレスが続いていたので気晴らしだ。場の雰囲気にも慣れてきたので、まあいいだろう。化粧は合わせてクロゼットがしてくれる。鏡に映る自分の姿を眺めた。悪くない。 「できた、チェス」 ミハナが振り向くと、チ…

 いったい何度繰り返されれば気が済むのだろう。①

フランクシナトラのマイウェイは尊大に聞こえるのに、カバーは誰が歌っても悲壮感が漂ってしまう。パンクには元から悲壮感が漂っていたといってしまえばそれまでだが、カバーしたのはパンクばかりではない。歌そのもののマジックよりも、フランクシナトラが…

ベッドに腰掛けている。チェスがなにか言ったか解らなかった。足下の絨毯の上でチェスが回り出した。 はしゃいでいるのか、怒っているのか、喜んでいるのか、ただ興奮しているのか、解らない。 その様子を見ていると、その毛糸の玉が破裂するのではないかと…

あなたは知っているのでしょう。わたしはあなたに助けられたのか、それとも捕らわれたのか。 でもそれは語られることがない。あなたが話そうとしないからか、わたしが聞かないからか。それを聞くことを声にすることを、あなたの無言が問いかけているような気…

 2.目覚めるとき

ユーシーに誘われて、エレベーターに乗ったんだ。 気がついたらこの部屋にいた。 エレベーターに乗る前はどこにいたか、その記憶を捜しているのだけれど、見つからない。ここに来るまでのなにかはあったのだろう。それでも、ここがどこなのか、どういうとこ…

同じような話が何度も繰り返されている。飽きもせずに、 * 1.部屋の景色 スイッチが入ると街の夜景が映し出される。カーテンが左右開き、煌めきが部屋の内を照らし出すほどに。中央にベッド、側には全面ミラーのクロゼットがある。あとはバスルームの扉と…

 窓から見える景色

窓にはネオンが瞬く都会の夜景が映っている。マンハッタンかな。四角い枠に抜き出された景色がそこにある。でも、ここはマンハッタンの高層ビルの中の一室じゃない、たぶん。場所について言えば、近くにカジノがあるって、解っているのはそれだけだ。毎日の…

 チェスは一人じゃない。

たぶんあれは何個もいる。どうでもいいけど、 わたし自身はここから外に出られないでもないし、それに、この部屋はたぶん見られる部屋なんだ。どこかで誰かがここを観察している。チェスがわたしに用意してくれた、たぶんそういう場所なんだろう。 わたしは…

 モーニングトレイン

朝の満員電車のシートに座っている人はみんな夢の中にいるのです。 座っている人はみんな寝ているのに、立っている人はみんな起きていて、窓の向こうの景色を見ているいます。立っている方が疲れるのに。立っておとうさんの膝に捕まって、窓に映るパノラマに…

窓に映るその景色を目の前にして、ミハナは息を呑んだ。自分自身と目が合ったから、、、、 向こう側の彼女はしまったって思ったみたいだ。気づかないように、「きづかれない」が前提だったのだろう。その後のことまで考えたことがなかったのだ。すました顔を…

 鏡

壁にはモニターが組み込まれている。窓のように枠のある横長の長方形に映る景色は、時間と共に変化していく。気分に応じてテーマを選ぶことができる。環境ビデオが写されているような感じだけど、聞こえる音の中には解説も効果音もない。あくまで窓としてそ…

 窓

窓に見えるけど、それは景色を映しているモニターだ。時間に応じて景色を変えていく。朝には、海だったり山だったりするけど、朝日が昇っていく。夕方になれば沈んでいく。方向は違うはずなのにね。昼の間はだいたい世界遺産の旅になる。窓には常にドラマチ…

 窓

エレベーターに乗ったところまでは憶えている。開いた扉の向こうには、この部屋しか行き場所がなかった。開いた扉、その先の廊下を歩いていくとこの部屋に辿り着いたってわけだ。 エレベーターに乗る前はどこにいたか、それは憶えていないので、それを捜して…

 窓

窓にはネオンが瞬く都会の夜景が映っている。マンハッタンかな。四角い枠に抜き出された景色がそこにある。でも、ここはマンハッタンの高層ビルの中の一室じゃない。近くにカジノがあるって、解っているのはそれだけだ。毎日のように出かけるから、そこら辺…

意識はどこから来るのだろう。 「お前はここから出て行かないのか?」 振り向くと彼はわたしを見ている。 「解らない」 解るわけないだろう。出てどこに行くのか、生きたいのか思い浮かばないのだから、ここで生きていくしかないんだ。ここが悪いとか、いい…

図書館で昨日見た夢を語り合うミハナとユーシー。 窓の外に、それを見ているユーシーがいる。ユーシーの足下にはチェスが回っている。 * 粘膜同士が触れ合う感覚は肌のそれとは違う、境界が曖昧で、意識が曖昧になっていく錯覚に飲み込まれていくような、 …