青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

 地面に落ちる影

太陽を横切る影があった。翼を羽ばたく、影が地面を通り過ぎていく。青い空を、通り過ぎる影が足下にも影を映していく。
「なに、あれ?」
「鳥みたいなもの」
空を目で追うミハナは言う。
「見れば解る。どこから来てどこに行くの?」
「向こうから来てその先へ行く。それだけ。おれ達はそれを眺めるだけだ」
「眺めるだけ? どうして?」
思わず、ミハナの声が裏返りそうになる。
「別の次元なんだ。見えるけど触れることはできない」
目の前の男は、地面に腰を落とし壁により掛かったまま動こうともしない。ミハナにも関心を示していないように見える。そんな姿が彼女を刺激する。
不快感が込み上げてくる、許せない。それでも結局、苛立ちは自分に向かうのだ。
「勝手にしろ」
捨てぜりふを吐いたミハナはその場を去ろうとする。逃れるのか去るのか。
意外な感情に乱れつつ、ここに居続けたくはなかった。


「壁の向こうに行くのか? 知っているか知らないけど、」
「聞いたことはあるけど、誰も知らない。知っている人に出会ったこともない」
「どうしてだろう」
「出て行った奴はいるけど、帰ってきた奴はいないからだろう」
「それって、解らないでもない」
「そう、ここですべてが終わってるんだ。ここから先は自分の物語で、共有するかしないか、その向こうまで行ったやつの問題だなんだ」
「そういうもんなのかも知れないな」
「つまらない」
「君がどう思うかは知らない。ぼくは日常が保てて、時々ここに来られて日常に戻ることができればいいんじゃないのかな」


日常に戻るのか。ここにいたわたし達って、なんだったの?
無機質な人混みの中で、存在し続けることに飽きはじめていたのかもしれない。