青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

 チェスを返して!

チェスがいなければ、わたしはここから出られない。
「あなたは意識的にわたしを受け入れて、退路を断った。あなたの気紛れに閉じこめられているの。ユーシーは本当に存在しているか、わたしがそう思えれば存在しているのかも知れないけど、わたし自身が存在しているのかさえ、疑わしくなっている」
その気持ちは自分自身を否定しているというか、目蓋を閉じて意識を閉ざしていた。


「それは考え過ぎじゃないかな。
あんたがアクセスを求めてきたんだろう。こっちは意識を解放しないと、相手がどんなやつか解らないんだ」
「それで、チェスを封じたの?」
「そういうことになるか。でも、いつでも戻せる。君が望めば」
そうだ、今のわたしはそれを望んでいない。でも、その可能性が失われていることも望んでいない。


「わたし、だと思ってたんだな」
ユーシーのつぶやきは声になる。
「どういうこと?」
聞かせたいの?
「ミハナの単独のアクセスだと思ってたんだ。そういうのは何度かあったからな、これまで。チームとなるとちょっと違う。その気で乗り込んでこられたら、あっという間に乗っ取られちまう。そういうこともあった。その時は連携させないように分断して、片づけていく。戻る余裕を与えないように。
ぼくは君と彼の関係を知らない。仕方なかったんだ」
「それでわたしは戻れなくなったの?」
「気の毒だとは思うけど、謝る必要はないと思ってる」
両腕を組んだ彼女は窓の向こうの景色を眺めていた。苛立たしさを、ここで外に向けても意味のないことは解っている。
「いいわ」
つばを飲み込む。そして、ユーシーを上目遣いに睨む。
「一つだけ方法がある」
「信じないけど、聞いてあげる」