青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

 4.壁の内側

ミハナの意識が弾けた瞬間、
目が覚めたんだ。彼女は壁に囲まれた運動場のような空間の真ん中にいた。側にはユーシーが砂混じりの大地に横たわっている。
起きて。ミハナは願う。目蓋を閉じたユーシーの表情を見つめ、青空を仰いだ。
ユーシーは目を開く。ユーシーの視界にはミハナと、四角く切り取られた青空がある。
壁が四方を囲んでいる、その空間は建物に囲まれた中庭だった。
どうなってるの?
自分のいる場所、彼のいる場所、同じなのは見れば解る。でも、同じ時間に二人が存在していることが、あり得ない。
あなたは誰なの? 答えて。


二人は壁に沿って、建物の様子を窺う。不思議と内には人の様子が感じられない。
中庭の中心に戻って、四角く切り取られた青空を仰ぐミハナ。
ミハナは、ユーシーの意識の中心にいるのだと思う。
自分がここから出られないかもしれない不安に襲われる。
でも、ここから外と、チェスとのコネクションを回復しなければ、
わたしはどうなるのだろう。
帰らなければならないのか、帰る必要などないのか、それ自体が解らない。
ユーシーと居ることの安心感と、ここが二人が出会った場所ではないという現実を、整理しなければならない。でも、できるのか。その気持ちが揺れ動く。


結局、考えを巡らしたあげく、二人は建物の中に入っていく。
廊下を一回りしながら階を上がっていく。


別の気配が動いていることを知ったとき、狙われているという確信に変わる。
一発目が逸れたのは偶然だったろう。でもそれはミハナの服の裾に穴を開けた。
走れ!
ユーシーの声が聞こえる。声に反応して駆け出すミハナ。
でも、どこへ?
立ち止まったミハナはあたりを見渡すが、道標になるようなものは見あたらない。
空しい響きが、眠りそうな意識を奮い立たせる。
ユーシーではなく、明らかにミハナが狙われている。
ミハナは、チェスが自分を狙っているのだと思っていた。チェスがすでにコネクションを取り戻しているのに、彼女にアクセスを悟らせていない。
ミハナは予測する。


ミハナはチェスとのアクセスを捜し始める。
壁がある。
チェスはデバイスを通さないと世界と接触できない。それがミハナだったが、他にもいるのかは解らないが、ミハナとの接続がなければここの状況は解らないはずだ。
こちら側にそれを抑制する力が、どこかにいるのだろう。
ミハナは、ユーシーの自律神経が彼の意志とは別に、彼を捕らえ葬ろうとしていることを知る。
ミハナは自分の記憶を辿る。きっかけがどこかに、あるはずだ。
ここが彼の意識の中なら、ミハナとの接点がある。どこかに。
知っているのでしょう?
わたしを殺したい気持ちがどこかにある。それはそれでしかたがない。でも、その理由がなければ納得はできない。