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けんちん汁

トルコ抗議デモ、日本企業への影響少なく、市内は平穏、視察も多く。
(日経産業新聞,2013/06/20,掲載ページ 13)

 トルコではエルドアン首相に対する抗議活動が続いているが、進出する日本企業などはインフラ建設や工場生産などの事業を計画通り進めている。抗議活動は最大の経済都市イスタンブールや首都アンカラなど大都市の中心部の広場など一部にとどまっており、地方への広がりを見せていない。
 トルコの抗議活動はイスタンブール中心部のタクシム広場の周辺が主な発生場所。警官隊が同広場とその近くの公園に陣取るデモ隊の強制排除に乗り出してからは厳重な警戒態勢がしかれている。
 ただ市内のその他の場所は比較的平穏で、通常通りの市民生活が続いている。17日には5つの労働組合が約90万人規模のストを実施したが、予定通り当日限りで18日には組合員は職場復帰した。
 進出する日本企業のトルコでの活動も大きな変化は見られない。トヨタ自動車はトルコ西部のアダパザル工場で、今夏から「カローラ」の生産を始める計画だったが、スケジュール通り今月17日に生産を開始した。トルコ以外に旧ソ連圏や中東、欧州連合(EU)に輸出する。
 住友ゴム工業は今秋に中部チャンクルでタイヤ工場を着工する。地方のチャンクルでは首相の支持率は高く、抗議デモはほとんど起きていない。当初計画通り2015年中に操業を開始し、19年末に日量約3万本を生産する。2割はトルコ国内向け、8割は中東や旧ソ連圏、欧州に輸出する。投資額は約400億円。
 大規模なインフラ整備も着々と進展。大成建設ボスポラス海峡の海底トンネルを予定通り10月に開通する予定。「工事現場でデモの影響はない」(同社)。IHIのイズミットの大型つり橋工事も進んでいる。
 日本勢が受注を決めた黒海沿岸シノプの原子力発電所の建設計画については、日本勢の民間企業がトルコ政府との正式契約に向けた細部の調整が続いている。近く事業化調査も始まる予定だ。三菱電機はトルコ政府から受注した通信衛星の1号基を年内にも打ち上げる方向で調整している。
 トルコ政府は14〜18年の中期計画で平均5・5%の成長を目標とする。成長見通しを受け、進出を検討する日本企業も多いようで、日本貿易振興機構ジェトロイスタンブール事務所の山口直彦所長は「デモ発生以降も週に十数件の日本企業が訪問してくる。『市内は意外と平穏だ』と感じる人が多いようだ」と話す。
 もっとも、抗議デモが暴徒化したり、活動が長期化したりすれば、影響が広がる恐れもある。また来年夏の大統領選を見据え、各社ともトルコの政治リスクを慎重に見極めようとしているようだ。