青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

 2.裏庭

雑草の生い茂る中で、ミハナは透明なチューブを行き来するエレベータを見上げた。
「なにこれ」


校舎の裏にエレベータがあるって。
それをユーシーに聞かされたミハナは怪訝に思いながら、その風景を思い出す。
裏庭には雑草が生い茂っている。そんなイメージしかない。その向こうには川が流れている。対岸には野球のグラウンドがいくつか並んでいて、その先にはゴルフ場らしいが確かめに行ったことがない。対岸は学校の外で、向こう側の公共施設じゃなかったか。


「それがどうしたの?」
「確かめたいんだ。それが本当かどうか」
「わたしが必要なの?」
「そのことについては、君は必要ないかもしれない」
「ついてきて欲しいならそう言えばいい」


ユーシーの背中を見失わないように、
Tシャツの向こうの身体の動きに捕らわれる
ユーシーについて行ってみると、
校舎の上から透明なチューブ内を昇り降りするボックスはエレベータというより、タイムボックス、そのまま別の世界へ行き来しているような印象だった。ボックスの床はプレート状で、装置が集中しているのか、別の力がそこに働いているように見えた。動力らしい動力が見えないにもかかわらず、それらは透明なチューブの中で昇ったり降りたり、行き来しているように見える。


ユーシーはその中の一つの扉に向かう。(ミハナにはその扉をユーシーが選んだのか、どうだか解らない。少なくとも手短に向かったわけではなかった。もっと近い扉があったから。)
黒光りする、ピアノの表面のような扉が左右に開いた。足の裏から身体が押し上げられる感じが、その時にはもうエレベーターは浮かび上がっていた。
ミハナは両手を広げながら、バランスを取りながら、顎をあげると、視界は青空に覆われる。
まるで青空に落ちていくみたい。