青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

 3.カジノ

厚い絨毯をヒールが食い込む感触が心地いい。初めて踏み込んだときにはかかとが確かにならなくて足首を捻りかけ、スロットもロクに楽しめなかった。今はスロットの前で立ち止まることはない。のめり込めないんだ。にぎやかな場所にいるはずなのに、いつの間にか自分自身と向かい合っている。こんなところで孤独に陥りたくはない。


けれど、カジノの雰囲気は嫌いじゃない。
ズブロッカのストレートを片手に、積んだコインを数字の上に滑らす感じが心地いい。ノワールのヴァンサンカンがお気に入りだ。


それでも、どうにも負けが込んだことがないのが、のめり込めない理由になっているのだけれど、適当に山ができたところでやめてしまうわたしはずるいとチェスは言う。
「日が変わる前に帰るのがシンデレラでしょう? そういうのがいいんだ」
チェスは訳が分からないって言うけど、わたしはそんな言い訳が気に入っている。