青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

初めてのルーレット

そこには、誘う匂いがあった。甘いような酸っぱいような、悪くない感じ。
チップを数字の上に置いて、回る数字の円盤ににわくわくしてくる。目の前で大きくなっていくチップの山はビギナーズラックだったのかもしれないけど、またあの場所にいる自分を想像できる。その日はチェスがフォーマルにって言うからドレスにしたけど、今度はワンピースではなく、カジュアルにジーンズで行こうと思った。気に入った場所に行くときは、自然なスタイルで行きたい。


「チェス、ジェニーはどこ?」
ミハナはチェスを介してでしか、オンラインに入れない。
彼女の意志を受けてネットに入っていくのはチェスで、ミハナはチェスの報告しかしることができない。それを聞いて命じる。
「ここにはいないみたいだ」
「どこにいるの?」
「探してくるよ」
足下のチェスの動きが止まる。アクセスしている間のチェスは無防備だ。彼女はそれを切断することができるし、そうしようという行為を見過ごせば、誰でも切断することができるだろう。アクセス中のチェスにとって、ミハナは生命線になる。


そもそも罪人なのか、さらわれたのか、死んだのか、解らないのだ。
それなのにわたしはここにいる。チェスは理由を教えてくれない。そこで危うい考えに捕らわれる。自分が囚われ人であるという現実に。