青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

 窓から見える景色

窓にはネオンが瞬く都会の夜景が映っている。マンハッタンかな。四角い枠に抜き出された景色がそこにある。でも、ここはマンハッタンの高層ビルの中の一室じゃない、たぶん。場所について言えば、近くにカジノがあるって、解っているのはそれだけだ。毎日のように出かけるので、それは知っているってだけで、後はよく解らない。歩き回ったことがないから。
窓に向かった後、気が向けばダブルベッドに身を投げる。
わたしはここに捕らわれている。


エレベーターに乗ったんだ。気がついたらこの部屋にいた。


エレベーターに乗る前はどこにいたか、その記憶が見つからなくて捜している。ここに来るまでのなにかはあったのだろう。そして、ここがどこなのか、どういうところなのか知らなければ始まらないような気がしている。
わたしは誰なのだろうとか。どこから来たのか、そちらが先なのだろうか。そんなことをぼんやりと考えながら、窓を見ている。
窓と呼んでいる窓はモニターだ。壁の向こうを見るとか外の空気を入れるとか、そんな窓はこの部屋にない。モニターは時間に応じていろんな景色を映している。草原の中で日が昇り、日が沈むと明かりが煌めく都会の夜景がそこにある。それを眺めるのが日常のようになっていた。




チェスが呼んでいる。
ベッドからおろした足首に回転する毛先を感じる。狐の襟巻きに触れられるような感触だ。




チェスは管理人。わたしのか、この部屋のかは解らない。わたしの言うことは聞くのでわたしのかもしれない。でも、この部屋のなんじゃないかな。この部屋には前の住人がいて、その時もチェスはここにいたらしい。
らしいというのは、なかなかチェスの口が堅いせいだったりする。時々どちらが主か解らなくなる。








外に出られないでもないし、それにこの部屋はたぶん見せる部屋なんだ。チェスがわたしに用意してくれた、たぶんそういう意味のある部屋なんだろう。


チェスは複数存在している。三つは確実にいる。