青空が落ちてくる。

are you thinking? われらはシンクタンク『世界征服倶楽部』

 2.目覚めるとき

 ユーシーに誘われて、エレベーターに乗ったんだ。
 気がついたらこの部屋にいた。




エレベーターに乗る前はどこにいたか、その記憶を捜しているのだけれど、見つからない。ここに来るまでのなにかはあったのだろう。それでも、ここがどこなのか、どういうところなのか知らなければ始まらないような気がしている。
わたしは誰なのだろうとか。どこから来たのか、そちらが先なのだろうか。そんなことをぼんやりと考えながら、窓を見ている。
窓と呼んでいる窓はモニターだ。壁の向こうを見るとか外の空気を入れるとか、そんな窓はこの部屋にない。モニターは時間に応じていろんな景色を映している。草原の中で日が昇り、日が沈むと明かりが煌めく都会の夜景がそこにある。それを眺めるのが日常のようになっていた。




チェスが呼んでいる。
ベッドからおろした足首に回転する毛先を感じる。狐の襟巻きに触れられるような感触だ。




チェスは管理人なのだけれど、わたしを管理しているのか、この部屋を管理しているのかは解らない。わたしの言うことは聞くのでわたしのかもしれない。でも、この部屋のなんじゃないかな。この部屋には前の住人がいて、その時もチェスはここにいたらしい。
らしいというのは、なかなかチェスの口が堅いせいだったりする。時々どちらが主か解らなくなる。




扉をを拾ったわたし一人で外に出ることはできない。チェスが必ずついてくる。常に足首にチェスのふさふさした毛を感じている。